ZEBは、Net Zero Energy Building(ネット・ゼロ・エネルギー・ビル)の略称で、「ゼブ」と呼びます。
快適な室内環境を実現しながら、建物で消費する年間の一次エネルギー収支をゼロにすることを目指した建物のことです。
出典:ZEBとは? | 環境省「ZEB PORTAL」
省エネによって使用エネルギーを減らし、創エネによってエネルギーをつくることで、正味(ネット)のエネルギー消費量をゼロにすることができます。
こちらの記事では、ZEBの概要や屋上緑化、壁面緑化のメリット、省エネ効果をお伝えします。
ZEB実現に向けて緑化を検討している方は、ぜひ参考にしてください。
ZEBが生まれた背景
頻発する異常気象や、エネルギー需給の安定化に向けて、エネルギー消費量を減らすことが必要とされています。
2015年のパリ協定後、日本政府は地球温暖化対策計画を作成しました。
「2030年度までに、2013年比で温室効果ガス26.0%減」という目標に向け、政府は新たに建築物省エネ法を施行しています。
建築物省エネ法のページ – 国土交通省
省エネの観点からエネルギー消費量を部門別で見ると、業務部門(事務所ビル、商業施設などの建物)でのエネルギー増加が顕著です。
そのため、建物でのエネルギー消費量を大きく減らすことを目的として、ZEBという指標が生まれました。
省エネ基準義務化の範囲拡大
省エネルギー基準の適合は、2021年2月現在では「延べ面積2,000㎡以上の新築非住宅建築物等」に対して義務化されています。
2021年4月からは適用範囲を拡大し、300㎡以上の非住宅に対しても省エネ基準への適合が義務化されます。
省エネ基準に適合していなければ確認済証が発行されず、工事の着工・開業することができません。
2030年のCo2削減目標に向けて、建築物の省エネに関する規制はより厳しくなっています。
ZEB認証取得のメリット
ZEB認証取得のメリットは、大きく以下の4点が挙げられます。
- 光熱費の削減
- 不動産価値の上昇
- 災害時の事業継続
- 快適性・知的生産性の向上
1つの建物にはオーナー、テナント、働く人、地域の人など、さまざまな立場の人が関係しています。
立場によって得られるメリットは異なるものの、その全ての人々にZEB認証取得のメリットがあります。
それぞれ立場の人が自らのメリットを理解することで、ZEBの実現に向けた体制が整いやすくなります。
4つのZEBシリーズ
ZEBには、省エネと創エネの達成度に応じて
- ZEB(ゼブ)
- Nearly ZEB(ニアリーゼブ)
- ZEB Ready(ゼブレディ)
- ZEB Oriented(ゼブオリエンテッド)
の4シリーズがあります。
ZEB(ゼブ)
ZEB(ゼブ)は最も取得難易度が高いZEBシリーズです。
認証取得のためには、省エネ(50%以上)+創エネで、100%以上の一次エネルギー消費量の削減を実現する必要があります。
Nearly ZEB(ニアリーゼブ)
Nearly ZEB(ニアリーゼブ)は、再生可能エネルギーを創り出し年間の一次エネルギー消費量をゼロに近づけた、ZEBに限りなく近い建築物です。
認証取得のためには、省エネ(50%以上)+創エネで、75%以上の一次エネルギー消費量の削減を実現する必要があります。
ZEB Ready(ゼブレディ)
ZEB Ready(ゼブレディ)は、高効率な省エネルギー設備の設置や外皮の高断熱化を行った、ZEBを見据えた建築物です。
認証取得のためには、省エネで50%以上の一次エネルギー消費量の削減を実現する必要があります。
ZEB Oriented(ゼブオリエンテッド)
ZEB Orientedは、2019年に作成された新しいシリーズです。
以下の3つの条件を満たす必要があります。
- 延べ面積10000㎡以上
- 省エネで用途ごとに規定された一次エネルギー消費量(*1)の削減を実現している
- 更なる省エネに向けた未評価技術(*2)を導入している建物
(*1)用途ごとの一次エネルギー消費量の削減規定 | |
---|---|
事務所等、学校等、工場等 | 40% |
ホテル等、病院等、百貨店等、飲食店等、集会所等 | 30% |
(*2)WEBPROにおいて現時点で評価されていない技術 15項目
詳細:経済産業省によるZEB実証事業について P3-6
延べ面積10,000 ㎡以上の建築物は、棟数ベースでは全体の1%程度です。
しかし、エネルギー消費量ベースでは36%程度と全体に与える影響が大きいことから、ZEB Ready取得促進のために作られました。
ZEB実現に向けた取り組み
ZEBの実現のためには、以下の順序で取り組みを行うことが重要です。
- パッシブ技術によって必要なエネルギーを減らす
- 必須エネルギーについてはアクティブ技術によってエネルギー効率を上げる
- 必須エネルギーは創エネ技術によって賄う
パッシブ技術とは
パッシブ技術とは、自然エネルギーを上手に活用する技術のことを指します。
エアコンや照明など、電気を使った機械に頼ることなく、建物のしつらえによって常に効果を発揮します。
パッシブ技術の例
・日射遮蔽
・自然採光
・自然換気
アクティブ技術とは
アクティブ技術とは、主に電気などのエネルギーを無駄なく効率的に活用する技術のことを指します。
人がいない時はエアコンや照明をオフにするなど、設備を適切にコントロールすることで省エネにつなげます。
アクティブ技術の例
・空調機設備の高効率化
ZEB実現に向けた取り組みとして、まずはパッシブ技術を取り入れて省エネを目指すことが重要です。
屋上緑化や壁面緑化で省エネを実現
パッシブ技術の一つに、屋上緑化や壁面緑化による外皮断熱があります。
また、緑化のメリットは省エネだけでなく、働く人の知的生産性向上や健康維持にもつながります。
屋上緑化のメリット
屋上を緑化すると、緑の断熱作用により屋内の温度上昇を抑制する効果が期待できます。
国土交通省屋上庭園で行われた研究では、屋上緑化によって屋上のタイル表面温度が、ピーク時の20℃以上下げられることがわかりました。
参考:熱環境の改善効果 国土交通省屋上庭園
また同研究では、屋上緑化によって空調で使われるエネルギーが削減できるというシミュレーション結果も出ています。
一定条件を満たしたモデルルーム(30㎡)を想定したシミュレーションでは、
エネルギーを約4%(モデルルーム1室あたり7Mcal/日)削減することが可能と算出されました。
壁面緑化のメリット
壁面緑化にも屋上緑化と同じく断熱効果があり、建物への熱の流入を抑えることができます。
コンクリート壁と緑化パネルの表面温度を比較した実験では、緑化パネルの方がピーク時で2〜4℃低くなるという結果が得られました。
さらに日没後は、緑化パネルの方がコンクリート壁よりも2〜3℃高い温度になることがわかり、壁面緑化を施すことで建物の表面温度の変化がゆるやかになることがわかります。
参考:壁面緑化による温熱環境改善効果
また、同研究では植物の蒸散量と潜熱フラックスの関係も調べています。
植物と緑化基盤材からの蒸発散によって、気化熱が潜熱として消費されるため、大気の温度を上昇させずに建物の熱を消費することができます。
これは、都市部で問題になっているヒートアイランド現象の抑制につながります。
緑化によって知的生産性も向上
緑化によってビルの屋上に自然の風景を作り出したり、壁面緑化で窓から緑が見えるようにすることは、省エネ以外にもメリットがあります。
働く人の視界に植物があることで、知的生産性が向上するという研究結果があります。
また、植物などの自然を身近に感じることは、ストレスを低減する効果があることもわかっています。
オフィスにおける観葉植物によるメンタルヘルスケアと知的生産性の向上
このように、空間デザインに自然を取り入れることをバイオフィリックデザイン(Biophilic Design)と言い、バイオフィリックデザインのオフィスはZEBだけでなく、WELL認証やCASBEE-WO認証でも高評価になります。
壁面や屋上の緑化を行うことで
- 光熱費が削減できる
- 省エネによりZEB認証取得に貢献する
- 企業ブランド、ビルの資産運用が上がる
- 働く人の知的生産性が向上し、健康維持につながる
など、様々なメリットがあります。
とはいえ、緑化による省エネ効果を維持し続けるためには、使われる植物の定期的なメンテナンスが欠かせません。
また、知的生産性向上のためには、快適性と利便性を兼ね備えた空間デザインが必要です。
私たちヒキダシ|GREEN COMPANYは、オフィス空間にバイオフィリックデザインを組み込み、 オフィスの快適性、生産性、創造性、幸福感などを引き出す空間づくりをお手伝いします。
緑化事例
壁面緑化
屋上緑化
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