緑視率(読み方:りょくしりつ)とは、「視界に入っている緑(植物)の割合」を示す指標です。
簡単に緑の量を把握することができ、まちづくりやオフィスの作業効率高上のために活用されています。
こちらの記事では、緑視率の計算方法や、緑視率を高めるメリットについてお伝えします。
緑視率の計算方法
平成25年に大阪府が作成した緑視率調査ガイドラインによると、緑視率の計算方法はこのように定義されています。
緑視率の計算方法
緑の面積として、樹木(木の幹、枝)や草花、壁面緑化、芝生などもカウントします。
具体的な計算にはこちらのツールを使うのが便利です。
緑視率計算サービス|NPO地域づくり工房
写真をアップロードするだけで、簡単に緑視率を計算することができます。
緑視率 16.58%
緑視率計算サービスより算出
緑被率(りょくひりつ)との違い
緑被率(りょくひりつ)とは、単なる緑の量を示す指標で、主に屋外の緑地面積を表す際に使われます。
緑視率の方が、景観をより表現しやすく、屋内でも屋外でも使われる指標になります。
緑視率を高めると得られる3つの効果
緑視率を高めることによって、私たちにどんな良い結果をもたらすのでしょうか?
豊橋技術大学の松本教授の研究によると、次の3つの効果が期待できます。
オフィスの生産性・勉強の集中力向上
視界の中に植物があることによって、作業効率が上がることがわかっています。
研究結果では、植物ありの場合、作業効率予測上昇率が3. 4%アップしました。
実験では、タイピング作業や記憶作業など、単純な作業から効果を測定しました。
仕事をするオフィスワーカーだけでなく、勉強する学生にとっても注目の結果ですね。
ストレス低減効果
観葉植物が視界にあると
- 心拍数を抑える
- 精神的ストレスを抑える
効果があることがわかっています。
これらの癒しの効果を「グリーンアメニティ効果」と呼び、視覚的な効果によってストレスを和らげる作用があることが2008年に愛媛大学が行った研究からわかっています。
グリーンは単なるインテリアではなく、安らぎを与える効果もあるのです。
空気清浄作用
観葉植物には、気孔からの蒸散によって室内の湿度・温度を一定に保つ効果があります。
さらに、空気を浄化する作用があることが、NASAの研究からわかりました。
密閉された宇宙船内には300種以上の揮発性有機化学物質が漂っていますが、その除去に有効とされたのが植物の浄化作用でした。
研究によると、およそ5畳のスペースに観葉植物が1つあれば、空間の環境を大きく改善できるそうです。
緑視率の最適値は15%
豊橋技術大学と企業の合同研究によると、「緑視率が10~15%の場合、最も精神的ストレスが緩和され、パフォーマンスが向上する」という結果が出ています。
また、植物のレイアウトによる影響を調べた研究では、
隣の席とパーティションで仕切り、机の上に植物を置いた状態が最も心理的ストレスが低くなるということがわかりました。
ただし、植物を置いた直後は「拒絶反応」が出てしまうため、環境の変化に慣れるまで一時的にパフォーマンスは落ちることがあります。
いきなり作業効率が上がることは期待せず、慣れるまでしばらく様子をみましょう。
植物の種類によって効果に差がある
さらに植物の種類によって効果に差があることも分かっています。
男女でも反応に差があり、特に女性は花のある植物に反応を示すこともわかっています。
はじめは、なるべくコンパクトなサイズで、管理に手間のかからないのものから始めるとよいでしょう。
卓上植物ならば、コンパクトなテーブルヤシや高い空気清浄作用のあるウンベラータ。
大きめの植物が置けるスペースがあれば、世話の必要が少ないベンジャミンなどがおすすめです。
また、土を使わないハイドロカルチャーや、水やりが少なくてすむエアプランツなども良いでしょう。
造花でも効果がある
緑視率を手軽に高めることができ、手に入りやすい造花(フェイクグリーン)でも、眺めていると目の疲労が回復することがわかっています。
目の疲労の回復度を検証したこちらの実験では、パソコン作業を行ったあとで造花を眺めた場合、何もしなかった場合よりも目の疲労が回復したという結果が出ています。
飲食店や専門店など、衛生面や管理の都合上、造花を入れた方が良いケースもあります。
本物のグリーンの方が目の疲労回復効果は高いですが、設置が難しい場合は造花を取り入れてみてください。
あえて管理させることにもメリットが
おもしろいことに、植物の管理をあえて職員が行うことで、良い効果をもたらすという研究結果も出ています。
イギリスの刑務所で行われた実験では、囚人に刑務所内のガーデンで園芸作業を行わせたところ
- 自尊心が高まり
- 自己コントロール感が高まり
- チームワークが良くなる
という結果になることがわかりました。
植物を育てていくことで小さな変化にも気がつくようになり、コミュニケーションが増え、自分が管理しているという責任感も生まれます。
オフィス作りをみんなで行うことで、自分たちで環境を良くしていくというマインドを育てることもできますので、職員で管理を行うのも良いですね。
緑視率を高めたオフィスの事例
生産性向上のために、緑視率を高めたオフィスの事例を紹介します。
Googleオフィス
(スイス・チューリッヒ)
スイスのチューリッヒにあるGoogleのオフィスは、オフィスというよりテーマパークのようなスペースです。
階段ではなく滑り台が設置されていたり、フィットネスルームが完備されていたりと、遊び心にあふれた設計となっています。
まるで森の中にいるようなこちらの部屋は、とてもオフィスの中とは思えません。
心も身体もリフレッシュできそうですね。
Second Home Lisboa
(ポルトガル・リスボン)
リスボンで最も人気のあるコワーキングスペースがSocond Home Lisboaです。
バイオフィリックデザインによる設計がされており、植物と自然光に満ちたオフィスになっています。
ヨガや瞑想の教室もあり、併設されたカフェでは有機野菜を使ったフードメニューを楽しむことができます。
家や地域づくりでも緑視率を活用
緑視率と騒音の心理的効果量を調べた実験では、「緑視率が高い方が交通騒音が心理的に軽減される」という結果が出ています。
沿道に植栽を作ることへの効果が、科学的なエビデンスに基づいて実証されています。
参考:交通騒音に対する住民意識と沿道植栽地の心理的効果に関する研究
また、「自然が少ない都市部の人ほど、自然を求めて家の中に花を飾るのではないか?」という仮説のもとに行われた研究もあります。
調査の結果では、「居住環境の緑視率が低いほど、家に花を飾る傾向がある」という結果が得られました。
参考:都市郊外の居住環境における緑視率と住民による居住での花の装飾行動との関係
このように、住宅や家についても緑視率をベースにした研究がたくさんあります。
緑視率のまとめ
緑視率を高めると、生産性の向上、ストレス緩和、空気清浄効果が期待でき、会社が健康経営に取り組んでいることを社員に目に見える形で示すことができます。
Googleやアマゾンなど、最先端の企業では緑視率を指標としてオフィスを設計しているところもあります。
デスクの上に植物を置くだけでも、簡単に緑視率を高めることができますので、ぜひ緑視率を高めてオフィスの生産性を上げてみてください。
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緑視率に関する論文・資料
室内等の緑によるVDT作業がもたらす視覚疲労の回復効果に関する実験的研究-近藤三雄 鳥山貴司 1986
グリーンアメニティの心理的効果に関する最近の研究 – 仁科弘重 2008
都市郊外の居住環境における緑視率と住民による居住での花の装飾行動との関係 −水上象吾 2014
交通騒音に対する住民意識と沿道植栽地の心理的効果に関する研究 – 白子由起子 田畑貞寿 1985
密集市街地における鉢植えの緑の配置と形態 – 篠塚香里 横張真 栗田英治 渡辺貴史 2003
オフィス空間における植物量のストレス緩和への影響に関する研究 – 橋本幸博 鳥海吉弘 2009
オフィスにおける観葉植物によるメンタルヘルスケアと知的生産性の向上 – 松本博 (2015年屋内緑化レポートVol2)
室内空気汚染軽減のための室内景観植物の研究 – NASA 1989
都市の緑量と心理的効果の相関関係の社会実験調査について-国土交通省
Organic Gardening Program in U.K. Prison Reduces Drug Use 2010
緑視率調査ガイドライン – 大阪府 2013